小さな巨人? Intel DC3217IYEはMac miniとは方向が違う感じ

今年は大枚をはたいてちょくちょくハードウェアを買っていて(金額的に本当に大枚なのかは考えないことにする)、今回も魔が差してIntel DC3217IYEを買ってしまった。

まあでもこれで打ち止め――なはず。もうすっからかんだよぉ。

Sizka Super-microDXに続く面白そうなミニPCだ。

まず、外箱を開けるとIntelの例のジングルが流れる素敵仕様なのだけど、これどうも光センサーで感知しているようだ。なので冬場に着る毛布装備状態で作業していると*1毛布の袖口がセンサーのあたりに当たって何度もジングルが流れる真・素敵仕様にバージョンアップする。

中身は中身で、ACアダプタ付属だけど電源ケーブル部分が付いていない、これまたある意味素敵仕様。自作とかベアボーン組み立てでは時々罠が待ち受けていたりするものだけど、さすがにこの発想はなかった。まあでも親切なPCショップでは電源ケーブル付きで売ってたりするけど。

本体は小さい。初代のMac miniよりもぐっと小さい*2。2012年モデルのMac miniと比較すると、幅と奥行は2分の1〜3分の2近く小さくて、高さはわずかに上回る感じ。とはいえ現行のMac miniが電源内蔵なのに対して、DC3217IYEはACアダプタが必須な点は考慮するべきだろう。あとカタログスペックもMac miniより低い。

多分、Mac miniとの差異は、両者が目指す方向の違いからきているように思う。

Mac miniは、どちらかといえば「デスクトップPC」の系譜にあるように思う。ただ従来のデスクトップPCよりも圧倒的にコンパクトで、加えてパワフルかつスタイリッシュで、ヘビーすぎる用途以外(つまり一般的な用途)には十二分な機能を提供している。ラインナップ的にも、従来のデスクトップPCの役割をiMacと共に担う感じだと思う。

一方でIntelは最近、ローエンドCPUのラインナップを従来の低価格PC向けからモバイルやAIO(All In One)向けに舵をきろうとしている。AIOは、要はiMacのようなディスプレイ一体型のPCだ。現在の低価格PCよりも収益が見込める、というのがIntelの考えのようだ。

DC3217BYやDC3217IYEのケースはVESA規格対応のディスプレイの背面に簡単に取り付けられるようになっている。基盤が小型で薄いのは、将来的にディスプレイに内蔵することを考慮しているからだろう。CPUがモバイル向けのCore i3-3217Uなのは、TDPを17Wと低くすることで、ディスプレイに内蔵した際に電源を1つのACアダプタでまかなえるようにするための布石だと思う。

その意味では、ディスプレイこそ付属しないものの、DC3217IYEとの比較対象としてはiMacが相応しいかもしれない。

ではIntel(というかPCメーカー)はiMacを狙っているのか? ちょっと違うように思う。

単純にカタログスペックから考えると、iMacよりもローエンドの層を狙っているのではないかという発想にたどり着く。iMacほどのスペックは不要だけど画面は広いほうがいい、というユーザへの売り込みだ。ただ、個人的にはそんなニーズがあるのか疑問だ。大きめのディスプレイが欲しい人は、何となくPCのスペックにもこだわる気がする。ディスプレイにこだわらないのなら、もうちょっと小さくまとまったノートPCやタブレットPC(というかiPad)に流れる気がする。

それよりも、そもそものターゲットがiMacとは異なる、という可能性の方が高いと思う。具体的にはスマートテレビの安価な代用品やデジタルサイネージ用端末などの家電寄りの分野だ。x86系の汎用なパーツにオープンソースのOS・ソフトウェアの組み合わせで低価格帯の製品を短期間で出す、という方向は(それが成功するか否かは別として)アリだろう。

CPUとしてAtomではなくモバイルのCore i3を持ってきたところや内蔵インタフェースがmSATAである点も、家電寄りの分野を視野に入れていることの状況証拠だと思う。CPUとしてそこそこの性能があり、内蔵GPUもそこそこの性能で動画再生には問題がない。mSATAについては、デバイスが小型であるだけでなく、SLC-SSDの採用をにらんでいる可能性もある。

特にデジタルサイネージ向けとしては、AIOなら余計な配線が不要だ(無線LANを使うなら、事実上必要な配線(?)はACアダプタだけで済む)。長時間使用することを考えるならTDPが低めの方が都合がよいし、Core i3ぐらいのCPUでも性能は十分だ。あと、中身がx86系PCなので既存のLinuxディストリビューションを使えるし、オープンソースの各種アプリやライブラリも揃っている。PC-UNIXの経験や伝統的なUnixプログラミング技法を流用しやすい。

――脱線した。話を戻そう。

DC3217IYEの本体は小さくて比較的軽い。というか軽いはずなのだけど、実際には重く感じる。というのも、このサイズのPC周辺機器は例えばブロードバンド・ルータの類で、基本的に外装はプラスチックだ。なので非常に軽い。一方で本機は外装がアルミとプラスチックだ。どうしても似た大きさの他の機器と比較してしまい、相対的に「重い」と感じてしまう。

まあともかく、小さい! 小さいからか、ベアボーンPCだけど組み立てはメモリとSSDの取り付けだけだ。SSDというか、正確にはmSATAインタフェースのデバイスの取り付けなのだけど、現状ではSSDぐらいしかない。

メモリはDDR3のSO-DIMMスロットが2つ。TranscendのDDR3-1600(PC3-12800)8GBのメモリを2つ挿して意味もなく16GBにしてみた。DRAMの価格下落は凄まじい。というか14年前はPC-66 32MBとかの世界だったんだよなあ。すごい時代になったものだ。

すごい時代といえば、今回初めてmSATAのSSDを入手した。Crucial m4 CT128M4SSD3だ。

……何だ、この小ささは!

mSATAのSSDの小ささはどんなものか? SO-DIMMより小さい! この大きさで128GBだなんて信じられない。ラインナップに256GBの製品があるのも信じられない。もう何というか、ジャンボジェット機を見て「こ、こんな鉄の塊が空に浮かぶだなんて信じられんっ」と騒ぐ数十年前のおっさん的心境だ。

mSATAの採用は本体の小型化につながっているし、SSDを使用することで静音化にもなる。今回は自作PCの範疇なのでMLCSSDなのだけど、家電的な用途ならSLCのSSDを積んでOSまわりをインストールすることになるだろう。IntelのSLC-SSD 20GBが昨年あたりに12,000円前後だった訳で、普通のLinuxディストリビューションをダイエットして入れておくには十分な大きさだろう。他のデータは外付けディスクかUSBメモリに保存する。

ひとまず今回は実験用としてUbuntu 12.04.1 LTS Desktop Edition 64bitをサクッとインストールして日本語化した。この上にVirtualBoxを入れてPC-BSDとかを動かして遊ぶつもり。

*1:静電気的によろしくない作業体制だけど、寒さには勝てない。

*2:まあ初代Mac mini光学ドライブ付きだったので……。