出だしから非常に失礼な話だけど、『ディジタル作法』というタイトルはちょっと微妙な気がしないでもないような(ごめんなさい)。
- 作者: Brian W. Kernighan,久野靖
- 出版社/メーカー: オーム社
- 発売日: 2013/02/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 21回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
ただ、日常生活で「作法」というと、どうしても「決まりきった形式」という意味が強くなってしまう、と思っている。『ディジタル作法』というタイトルだと「『根拠なり思想なり』に重点が置かれている」という点が分かりにくい気がする。うまく言語化できないのだけど、もっと違う方面の内容であるような印象を受けてしまうような。
『ソフトウェア作法』や『プログラミング作法』を読んでいる人なら、「前提となる理由なり知識なりについてきっちり書かれている」という点は想像に難くないのだけど。
『カーニハン先生の「情報」教室』という、どこかで見たような副題は……うーん、私のようにK&Rとか知っている人に多少なりともインパクトを与えるから、ありなのかなあ。
文句を言うだけでは生産的ではないので、自分でもタイトルを考えてみた。
原題を直訳すると「デはディジタルのデ」みたいな表現になりそうだ。ただ、それでは身も蓋も無さすぎて、タイトル名として微妙だ。もっと、こう、キャッチーでエポックメイキングな感じが望ましい。
そこで思いついたのが『計数D』*1。こう書いて『ディジタルD』と読む。どこかで見たことのある表現のような気がするが、きっと気のせいだ。関係ないけど、手持ちのデバイスのCPUはx86だ、全くもって関係ないけど。
冗談はさておき、本書の内容は――非技術系の人をも対象に含めた「情報リテラシー」の本のはずだけど、それにしては意外と濃い中身だと思う。CPUについての説明にて玩具レベルのアセンブラ的なものを引っ張り出してきたり、非常に簡単とはいえJavaScriptでプログラミングさせたり、イーサネット・IP・TCPのパケットの簡単な構造図が載っていたりする。あと知的財産・著作権・プライバシーなどの法律がらみのネタにも触れている。
私は中途採用でコの業界に入った文系プログラマなので、新卒の文系プログラマ事情は全く分からないのだけど、『痛快!コンピュータ学』とあわせて新人文系プログラマ向け必読書ではないかと思う。準備体操代わりにこれを読んでから、他の本を読んだほうがよい。
基本情報技術者あたりの資格試験は、中身は悪くないのだけど、個々のカリキュラムが独立しているので、各カリキュラムの結びつきや全体の中での位置づけは学べない。本書だと、そのあたりの隙間が(全てではないが)補完されている。
あと技術だけ追いかけていると知的財産・著作権・プライバシーの問題についての知識が欠けてたりするので(私みたいに)、概要レベルとはいえ補完ができる点もポイントが高いと思う。
技術者でも基礎が欠けていると感じているなら、本書は「買い」だ。
(こういうこと書いているあたり、日本の底辺プログラマの底辺っぷりが分かるなあ)