書籍購入:『白と黒のとびら: オートマトンと形式言語をめぐる冒険』

こういう知的好奇心をくすぐる本は『CODE コードから見たコンピュータのからくり』以来だ。

オートマトン形式言語についての入門書なのだけど、いや、そういう先入観は持たないほうがよいだろう。

さしずめ本書は物語仕立てのパズル本、ミステリー小説仕立て*1のパズル本、といった感じだろうか? ある種のパズルじみた問題を主人公が紐解いていく過程を楽しみ、応用として自分自身で解き直して楽しむ本だ。ただ、そのパズルの根底にあるものが実はオートマトン形式言語だった、というだけにすぎない。

なぜこんなことを書くのかといえば、オートマトンとか抜きにしても面白い本だからだ。普通の市民図書館・県立図書館の一般書/娯楽書コーナーに置いてあっても不思議ではない。さすがにターゲットは絞られるだろうけど、(自分自身の世代の基準で書いてしまえば)中学〜高校生ぐらいの年齢の普通の子でもはまる人にははまる本だと思うのだ。

そして、その面白さゆえに問題を抱えている、という見方もできる。というのも、本書は従来の区分では「言語学」や「哲学」に分類されるか、または「計算機科学」あたりの分野に分類されてしまうだろうからだ。

上記のような分野の本だとみなされてしまうと、普通の書店や図書館で一般書の棚に並ぶ可能性が低くなるように思う。Web上の情報でも、本書のカテゴリは例えば「言語学」だろう。――つまり、例えどれほど入門向けで一般の人でもOKな内容であっても、普通の人からは「専門書」扱いされてしまい、敬遠されるのだ。

それゆえに、非常に面白い本であるがゆえに、この点だけが非常に残念で気がかりだ。

*1:とはいえ本書の舞台からいえば「ファンタジー物」なのだけど。