総じて、現在の3Dプリンタ界隈の全体像をつかむにはちょうどよい本だと思う。
3D Printing Handbook ―自己表現のための新しいツールを使う・考える (Make: Japan Books)
- 作者: 平本知樹,神田沙織
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2014/04/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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単に1冊にまとめただけでなく、最新の事情を調査・加味しているようだ。このあたり、3Dプリンタが日進月歩な代物であることの傍証となっていると思う。
薄い本だが、3Dプリンタの仕組みや種類の解説、ものづくりの現場での利用、3Dデータのつくりかたとプリントアウトまで、一通り網羅している。「3Dプリンタをガッツリ使う」という方面の本ではない。ある程度全体をつかんだ上でとっかかりとするに向いている本だ。
(「3Dプリンタや関連ソフトウェアの使い方」にフォーカスした本は、それはそれで賞味期限は短いだろう)
3Dデータ作成例では123D Design(http://www.123dapp.com/design)というフリーのCADが紹介されている。従来のCADより機能が少ないようだが、フリーで且つ使いやすいUIのようだ。それだけでなく、最近のソフトらしくコミュニティとの連携サイトがあり、他の人が作成したフリーのデータを使用・加工することができる。
またオンラインで3Dデータを作成、プリントアウトできるサービスもいくつか紹介されているが、個人的にはSake Set(https://www.shapeways.com/creator/sake-set)のようにテーマを絞ったサービスが興味深い。
「使いやすいUI」と「流用可能なテンプレート」の組み合わせは、結構効果が大きい気がする。
Unityのアセットストアもそうだが、素材を一から作成しなくてもよいのは、素人への敷居を低くする効果があるように思う。テンプレートを用意しておき、それを元に弄っていく方法なら、試しに挑戦する人が出てくるのではないだろうか?
またテーマを絞ることで、特定の分野に興味がある人を呼び込んだり、その分野向けにUIやテンプレートを特化させることも可能だ。汎用的な3D CADなどは、何でも自由にできるがためにユーザにスキルが求められるが、自由を捨てて特化することで素人向けに間口を広げる効果を得られる。
3Dプリンタの商業利用は、プロフェッショナル向けに自由度の高いB to B方面と、各方面に特化した素人向けのB to C方面に分かれるのではないかと思う。
3Dプリンタは、関連サービスを含めて日々変化し続けている分野だ。なので、おそらく本書の賞味期限は短い。短い反面、「今」「3Dプリンタ界隈で起きていること」を知るには手ごろな本だ。