ジュニアは採用できてもノービスは採用できない。ベテランになれないジュニアは淘汰される。

ジュニアを採用しない連中はシニアに値しない - portal shit!」を受けて。

そもそも「ジュニア」がどの程度の人を指し示すか、という話はあるが、アメリカの話っぽいので、おそらく最低でもCS(コンピュータ・サイエンス)の学士は持っているだろうし、修士や博士を持っている人もそれなりにいるだろう。

で、「履歴書の順序づけ - The Joel on Software Translation Project」からエスパーすると、アメリカのテック企業はCSの学位そのものの有無に拘っているのではなくて、「学位を持っている=CSの知識を持っている」という判断で履歴書をふるい分けた上で、次の採用ステップ(電話面接など)に進めているのだと思う。日本企業でも、例えば電子機器メーカーの技術者採用でその手の学部卒を採用しているものだが、それと似たようなものだろうか? ただアメリカのテック企業や日本の中小ベンチャー企業の場合、ソフトウェア開発の経験者(それこそ創業者)が履歴書のふるい分けに関わっているなら、CSの学位が無くても特筆すべき事項(例えば有名なOSSのメンテナである等)が書かれていたら履歴書のふるい分けで落とされることは無い――という印象がある(実際のところは不明だが)。

ついでに、「どうしてプログラマに・・・プログラムが書けないのか?原文)」を読んでアメリカのテック企業でのソフトウェア開発者採用事情を推測するに、流石にプログラムを書けない人はアウトだと思われる。

つまり「ジュニア=CSの知識を持っていて、簡単なコードぐらいは書ける人」である。

「ジュニアを採用しない連中はシニアに値しない」というのは、裏返せばソフトウェア開発者を採用する際の足切り基準がジュニアであると言っているに等しい。

そして、空気を読んで書かれていない行間を推測するなら、ジュニアに満たないノービス*1は考慮に値しない、ということである。CSの学位を持っていないとか、学位を持っていてもFizzBuzzのような簡単なコードすら書けない連中は、そもそもスタートラインに着くことを拒否される可能性が高い(ただし先に挙げた「例えば有名なOSSのメンテナである等」の天才枠は別で、CSの学位が無くても拒否されないだろう)。

あとアメリカの企業の場合、日本の企業よりも「職務不適格による解雇」は行われやすいだろう。

だから、スタートラインに着くことができたジュニアも、ベテランやシニアにステップアップできなければ、少なくとも職業プログラマとしては淘汰されるだろう(もちろん、キャリア開発を経て別分野に転身するなら話は別だが)。

一方で、元記事にもあるように、企業側はジュニアを受け入れてキャリア開発を支援する体制を整える方が健全だろう。誰だって最初は(職業プログラマとしては)素人なのだ。

ところで、ジャパニーズ・トラディショナルな新卒一括採用では、企業によっては「計算機科学とは無縁で、プログラムを書いたこともない人」みたいなノービスがソフトウェア開発者として採用されることがある。採用時に所属学部などでフィルタしている場合も、採用の過程でプログラムを書かせるところは稀だろう。

つまり日本企業では、ソフトウェア開発者としてジュニアに満たないノービスが採用される可能性が(少なくともアメリカのテック企業よりも)高い傾向にある。

あと、「職務不適格による解雇」に値する水準が高く設定されている(でないと解雇の妥当性をめぐる訴訟リスクを抱える)点もアメリカとは異なる。

そういった日本独自の事情を勘案した上で、幾分か割り引いて件の記事を読むべきだろう。

個人的には、ジュニアを採用した場合でも彼/彼女がベテランに育つか否か博打な面があるのに、ジュニアよりも教育コストがかかる――そして心が折れて数年で退職してしまい、それまでかけたコストが水泡に帰する可能性がある――ノービスを採用するのはリスクが大きいと思う。

せめて情報系の学部卒や専門卒に絞り込むとか、もしくは「職業訓練で半年座学と実習を受けながら基本情報技術者を取りました」ぐらいに気合いの入った退路の無い人でないと……教育するにしても、ジュニアとノービスではスタート位置が大きく異なるからなあ。

*1:フィギュアスケートの競技会の年齢別クラスはシニア、ジュニア、ノービスらしいので、ジュニアよりの下のクラスを意味する言葉としてノービスを使っている。