パソコンを常用するようになったのは、Windows 95の頃からだ。あの頃のシステムの不安定さを経験した人には、OSやアプリケーションは元来不安定さを抱えているものだという、ある種の不信感を持っていると思う。
パソコンなんてデータが消えて当然で、OSやアプリがクラッシュして当然で、ハードが壊れて当然なのだ。最近は以前よりマシであるとも*1、事態がより深刻化しているとも*2思える。
正直、こんな手の掛かる代物を一般の人に使わせるのは無理があると思うのだ*3。しかし今となっては、パソコンを全く使わない時代には戻れない。このジレンマに関する内容で、拙いながらも大学の卒業論文を書いた。何年も前の話だ。
それ以来、ソフトウェアやソフトウェア内蔵機器の品質――特に安全性と安定性――は、個人的興味の対象の1つである。
ここ10年の間に、個人所有のコンピュータの主流はデスクトップPCからノートPCに、パソコンからケータイやPDAといった小型のコンピュータに変遷してきていると思う。それ以外のいわゆる組込み機器の類も増えている。
一括りにはできないが、今の組込み分野の開発現場は大きな壁に直面していると思う。開発するソフトウェアの肥大化(高機能化/多機能化)や開発期間短縮の要求に対して、有効な対処ができてできているとは言い難い。高品質(高い安全性)が求められる分野なのに、品質にしわ寄せがきている。
いつか大事になるのではないかとヒヤヒヤしている。
そんな、少々捻くれた背景を持つプログラマとして、この本は見逃せなかった。
- 作者: David Rice,宮本久仁男,鈴木順子
- 出版社/メーカー: オーム社
- 発売日: 2010/03/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 2人 クリック: 40回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
まだサッと目を通しただけだが、ソフトウェアをインフラとみなした場合の現状の問題点を一通り扱っている。何が問題かざっと確認する――現状把握にはちょうどよさそうだ。
この本については、いずれ書評を書くつもり。
*1:少なくともWindows 2000以降は、OSレベルの不安定さは軽減された印象がある。
*2:最近はOSのパッチ適用だけでなく、アプリのバージョンアップも欠かせない。アンチウイルスソフトの類はその昔よりも多機能になっている。あと最近は2〜3年でハードウェアの故障が発生する気がする。
*3:私みたいに何だかんだでパソコンスキーな人ならともかく。