そろそろWindows XPについてひとこと言っておくか

おまいら(特に車がないと生きていけない地方在住者)1927年式のシボレーで毎日通勤したいか? それが趣味なら文句は言わんが、オレは燃費とメンテナンス費と自動車税と安全性能を鑑みて最近の軽自動車かコンパクトカーを選ぶぞ。

レジストリを弄ってWindows Embedded POSReady 2009に見せかけて更新プログラムを入手する方法が話題となっているようなので、一言)

どういうこと?

IT業界の技術進化の速さは、俗に「ドッグイヤー」と言われる。犬の成長速度(犬の1年は人間の7年に相当する)にちなんだ言葉だ。

ドッグイヤーを真に受けるなら、2001年10月(12年半前)に登場したWindows XPは、87〜88年前の代物だ。当時最先端だったものも、87年も経てば歴史的遺物と化すものだ。

だいたい、2001年頃の日本は、ケータイは今でいうガラケーかつmova全盛期でFOMAはごくわずかだったし、iPodが出たばかりでiPhoneなんて影も形もなく、パソコンの大半はデスクトップ型かタワー型(ミドル・ミニ・スリム)でノートPCは安くなってきていたけど高値だったし、データはCD-Rか3.5インチフロッピで受け渡ししていて、ネット回線はADSLが一気に出てきた頃でISDNや「アナログモデム+テレホーダイ」もまだまだ現役で、WWWの多くは比較的静的かつ牧歌的でAjaxやWebアプリケーションなんて言葉は存在しなかったのである。

その当時最適だったものが、今も最適であるといえるだろうか?

というか、ドッグイヤー換算しなくとも、12年半というサポート期間は破格だったと考えるべきだ。おそらく現行のコンシューマ向けのOSでは最長ではないだろうか? RHELRed Hat Enterprise Linux)が10年、RHELクローンが(RHELに追随していく保証があるなら)10年、UbuntuのLTSが5年、というのがコンシューマ向のOSのサポート期間の、それも長いほうの話だ。他のOSはもっと短い。

ローリング・リリース・モデルは、(現時点ではある程度スキルがある人向けのOSしか存在しない、という点を無視したとしても)知らないうちにシステム内部がバージョンアップされていき、いずれ「そのハードウェア・スペックでは動かないよ!」という状態に到達してしまうだろう。つまり、気づかぬうちに「初期のWindows XP向けPCにWindows 7を入れてみた」的な状態になっている可能性があるのだ。ある程度スキルがある人ならともかく、世の中の普通の人がそのことに気づくことができるのだろうか?

なお、OS以外の保証期間を考えると、新築住宅でさえ保証期間は10年だし、家電なんてよほどの大事でもなければ1〜3年の保証期間を過ぎたら……。

追伸

「ネットワークに接続できなくなる≒ネット用(事実上のPCの使い道)として使えなくなる」という点が、保証期間を過ぎても使える家電と異なるではないか、という指摘がある。

この指摘は、ある意味不正確だ。

おそらく、あなたが「保証期間を過ぎても使える家電」というイメージを持っている対象は、次のいずれかに該当するはずだ:

  1. ネットワークに繋がっていない機器である。
  2. ネットワークに繋がっている機器で、且つ実はサポートがとっくに終了していて危険が危ない〔ママ〕状態になっている。

ネットワークに繋がっているか否かの違いは非常に大きい。ネットワークに接続するようになった時点で、本来ならば、その機器の使用期間中はソフトウェアのセキュリティ更新を継続していかなくてはならない。しかしユーザが気づかぬうちにサポートが終了していて、実は危険な状態にある機器は意外と多い。何だかんだで、あれだけ大々的にサポート終了を喧伝したWindowsは、他のメーカと比べれば実は親切な部類になると言える。

ネットワークに接続する機器は増えている。上記 (2) に該当する機器は今も存在するし、今後はさらに増加して、色々と問題が発生するだろう。

問題は、現在の製造業の構造が「新しいモノを売って儲ける」というモデルであるため、収益をもたらさない「既に売ってしまったもののサポート」が比較的低調である点だ*1

この話題に関しては、製品に寿命を設ける(例えばサポート終了前にメーカがハードウェアの内部仕様やソフトウェア一式をオープンソース化して公開するとか)云々という話も出ているようだが、個人的にはかつてのアンチウイルスソフトでの方向転換ような感じで「年額/月額制でのサポート」とかが消費者に受け入れられるようにならないと、製品を作る側としては「コスト的に辛い→消極的なサポート」という態度にならざるを得ない気がする。

OS以外の保証期間の例として住宅や家電を挙げたが、住宅は販売した会社やサードパーティによる補修・メンテナンスの市場が成立している。家電も、ハードウェア部分に関しては、かつて修理業が成立していたが、コストに見合うペイが得られなくなったため廃れてしまった。

ソフトウェアに関しては、ハードウェアのような物理的制約が非常に小さなせいで、既存のモノ(建造物・航空機・船舶・その他)とは比較にならないほど複雑な代物であることが多い。これほどまで複雑なものを継続的にメンテナンスするには、それ相応のコストが必要だ。この「それ相応のコスト」をペイできる当てがない限り、危険な「ネットワーク家電」は増えつづけていくだろう。

個人的にIoTに懐疑的──いや、この流れは止められないだろうけど、大丈夫なのか心配になってしまうのは、この辺のメンテナンス・コストをどうするかという話が見えてこないからだ。本当に、どうするのよ、コレ。

*1:この辺は、実際には各メーカによってスタンスが違うので、一概に決め付けることはできないのだが……。