対象読者に注意! インフラ管理の素人向けの本。
ソフトウェアエンジニアのための ITインフラ監視[実践]入門 (Software Design plus)
- 作者: 斎藤祐一郎
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2016/01/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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IaaSによって,サーバ構築・運用の負荷は劇的に軽くなりましたが,その分,ITインフラ管理の業務を開発者が行うようなケースも増えています。本書では,そうした趨勢において,(以下略)
明らかに、今までインフラ管理系の業務に携わったことのない人を念頭に置いている。もう少しエスパーすると、インフラ管理に独学で取り組む(≒周囲に経験者がいない)人を想定しているように思う。
本書は、例えば「新規事業(もしくはベンチャー)でWebサービスを作ることになった。クライアント・サイドやサーバ・サイドの開発は腕に覚えがあるのだが、インフラ管理なんてやったことないよ! 周りに経験者もいないし……」という人が、ITインフラ監視の概要を学び、サービスの設計・開発の初期段階からインフラ監視も念頭に置いて作業を進められるようになるために読む、独習用のハンドブックだ。
または、例えば新人教育を経て保守・運用系の部署(もしくは自前で社内システムを整備してきた情報システム部とか)に配属された新人や、中小企業で外部公開サーバを初めて構築・運用することになったにわかシステム管理者が、個別の具体的な技術要素とは別に、ITインフラ監視の全体像を学ぶための本だ。
素人向けに「概要」をまとめた本であるため、具体的な技術ネタは少ない。その意味では、書名の「実践入門」の「実践」は不要というか、「実践」を含むことで誤解を招いているように思う。まあ刊行しているシリーズがシリーズだけに「実践」を含むのはしかたないかもしれないが……でも不用意ではある。
この辺の特徴というか、想定読者を踏まえて読まないと、例えば現時点(2016-02-10)でのAmazonのレビュー(その1とその2)のように、両極端の感想となる。「素人向けの概要書」という視点ではレビューその1が正しいが、一方である程度インフラ管理の経験がある人の視点ではレビュー2の方が正しい。やはり書名の「実践」が悪さをしている。
個人的には、最初の例に挙げた「新規事業(もしくはベンチャー)で(以下略)」のような人をターゲットとしているように思う。その手の人が独学で行き当たりばったりにインフラ管理に取り組むのではなく、「本書で教科書的な『インフラ監視の概要』を学んだ上で、おたくのシステムの構成や予算(≒身の丈)にあった仕組みを構築しなはれ」――というスタンスだと思われる。独学では、ネットなどでインフラ監視に関する個々の技術要素を学ぶことは可能だが、「ではそれらの技術要素をどう組み合わせて、何をどうすればよいのか?」という全体像(もしくはコンセプト?)を学ぶのは難しい。その辺のノウハウは、保守・運用系の現場の「未整理の暗黙知」であることが圧倒的に多く、部外者にとっては容易には知ることのできない代物だ。そんな「未整理の暗黙知」を整理して、エッセンスを抽出した本書は、貴重な一冊だ。