ヒマラヤ単独無酸素登山的オープンソース・コミュニティ活動

このエントリのタイトルは、本の虫の2013年10月〜11月のエントリからうかがいしれる諸々や、https://twitter.com/AntiBayesian/status/395501091443339264のやりとり(この一部分しか見ていないので、大いに誤解している可能性がある)を読んで感じたものを一言にまとめたものである、と思う。ちょっと自信がない。

C++標準化委員会というかC++ Working Groupの日本支部OSSのコミュニティではないと思うが、現状はスポンサーなしのOSSコミュニティに近い感じのようなので、あえてこういう表現をしている)

まあ、何というか、まず一般論として、コミュニティのメンバの懐やプライベート時間は非常に限られていることが多い。コミュニティ全体の活動は、それらの制約の強い影響下にある。

例えばヒマラヤ単独・無酸素登山に挑戦するためには結構な資金が必要なわけで、金なし・コネなしで自分の稼ぎだけでは無理ならば、資金を集めるためにスポンサーを探すとか募金を募るとか、そういった活動が必要となる。

たぶんオープンソース・コミュニティの活動も同じだ。メンバーの持ち寄りだけでは対応できないなら、メンバーのプライベート時間だけでは対応できないのなら、そして対応できないのが問題であると考えるのならば、それらの制約を取り払うために、活動費用やフルタイムで人を雇うための資金を得ることを考えなくてはならない。

(もちろん、ここで「対応できないが、しかたない」というスタンスをとっても構わない。その決断を外部が非難するのは筋違いというものだ)

OSSなら、スポンサーとなってくれそうなコの業界の企業を探してアタックするとか、会員制的なシステム(ユーザ会とか?)を導入して会費を徴収するとか、寄付を募るとか、そういう方向になると思う(このあたりは素人なのでよく分からないが)。

ただ、こう、一般論として、お金が絡んでくると他人からシビアな目で評価されるようになるので、背負うもの(「責任」とか)が大きくなってしまう。あと場合によっては法人化して適切な会計を行う必要も生じるだろう。そういった手続きやら運用やらの負担をどうするか、という問題が出てくる。こういうのは結構大変なはずだ。

あと、これも一般論だが、この世知辛い世の中で他人の懐から銭を出させるのは大変な訳で。

例えばスポンサー探しのために何の面識もない企業に真正面から突撃しても大抵は門前払いとなる。その企業の内部にコネ(理解者とのチャネル)があった方が、まず「とりあえず話を聞いてもらう」という段階に進める可能性が高い(その理解者が決裁権限のあるえらい人ならなおよし)。もしくは、自分自身が無名であるよりも有名である方が、可能性は高くなるだろう。

となれば、ある種のコネづくりだとか、広告塔として矢面に立つとか、そういった活動が必要となる。

「とりあえず話を聞いてもらう」段階に進んだとしても、簡単に資金を得ることはできない。乱暴に言えば「で、おたくのその○○ってのは、ウチにどんなメリットがあるの?」という疑問にたいする答えを短時間で効率的且つ印象的にプレゼンテーションしなくてはならない。企業内部に理解者がいたと仮定して、その人と実際に決裁の権限を持っている人が同じだとは限らないので、ある意味「素人向け」の説得・プレゼン技法が求められることが多いと思う。

このあたり、毛色は違うが、例えば Kickstarter.com を見てみれば、どこもプレゼンに力を入れているのが分かる。ただ単によいアイデア、よいモノであるだけでは駄目だ。しかも相手は忙しいし普段は(あなたがプレゼンで話す内容とは)全く異なる分野のことを考えている人だったりする可能性がある訳で、そんな相手を5分や10分程度で引き込み、説得しなくてはならない。

とはいえ、ねえ……世の中の全ての人がコネづくりとか広告活動とかプレゼンとかが得意というわけではないし、苦手ではないが積極的にやりたいことでもないなと考える人は少なくないのだ。仕事ならともかく、プライベートな活動になればなるほど、面倒は避けたいと考える人は多いのではないだろうか。

かくして、話は振り出しに戻る――の前に、そもそも最初の位置から動かなくなる。アレやりたい、コレ欲しい、でも時間とお金がない、どうしよう?

私など人付き合いがどうにも苦手で、人と会って話すのを避ける傾向がある人なので、この一件についてヤジをとばす外野にはとてもなれない。とてもではないが「自分には無理」と諦めてしまっているからだ。

そんなわけで、遅ればせながら、ドワンゴ入社おめでとうございます(と、まったく面識もないのに書いておく)。ああいう待遇で迎え入れてくれる会社が少ないというか、正確には「色々と検討したうえでお断り」ならともかく「はなっから歯牙にも掛けない」会社ばかりなのは、ちょっと良くない傾向だと思っている。