ここ最近の自作PC向けCPUの選び方 2015-12

予定外のパーツ交換に際して、久しぶりに自作PCのCPU選定を行った。そこでメモを残しておく。

今、自作PCのCPUを現行製品から選ぶとして、性能面に着目するならこんな感じ。

CPUパワーこそが重要
Intel Core-i7、i5
CPUパワーはそこそこでOK。クライアントPCで軽い作業に使う
Intel Core-i3、Pentium G、Celeron G
CPUパワーはそこそこでOK。クライアントPCで軽い作業に使うが、高解像度で動画も見たいかも
AMD APU Aシリーズ
CPUパワーは低くてOK。24時間稼動のサーバとして使う
Intel Pentium N、Celeron N
CPUパワーは低くてOKだが、Pentinu Nよりはほしい。サーバとして使う
AMD AthlonSempron
とにかく安価に
x86を捨ててARMのシングルボードコンピュータを使う

――AMD FXシリーズの居場所が無いな =(

性能こそ命ならCore-i7。SSDビデオカードを加えて、ゲームに良し、CAD/DTP/CG作成/動画編集に良し。正にハイエンド。

Core-i5も性能重視な人向けなのだが、意外とソフトウェア開発にも向いている。仮想化の支援機能をサポートしているプロセッサーナンバーを選択し、内蔵GPUを使いつつメモリと大容量HDDを詰め込んだ構成は、仮想環境を複数立ち上げながら統合開発環境で作業する際の最低限の環境といえる。

AMD FXシリーズは、ちょっと立ち位置が難しい。FX-9xxxの性能はCore-i7のハイエンドには届かない上に、発熱が洒落にならない。FX-8xxxのローエンドの性能は、Core-i5のハイエンドと重なってくる。ここでの「性能」は、あくまでもマルチスレッドでの性能だ。シングルスレッド性能は、今となってはFX-9xxxですらCeleron G以上Pentium G未満である。

世の中に出回っている一般的なソフトウェアは、マルチコアへの最適化が進んでいないものも多い。アーキテクチャの根本から変更する必要があるなら、なかなか実行する勇気がもてないものだし、コストをペイできる当てがあるか否かも考えなくてはならない。クロスプラットフォームのアプリケーションの場合、移植性が求められるコアの部分を、移植性を保ったままマルチコア対応を進めるのは、非常に難しい。これらの困難を乗り越えてマルチコアに対応したとしても、Windowsの場合、非常に高いバイナリ互換性ゆえに、古いアプリ(≒マルチコアに最適化されていないアプリ)を使い続ける人が数多く存在する。

こういった事情があるため、AMD FXシリーズのシングルスレッド性能の低さが足を引っ張るケースは意外と多いだろう。

GPUを内蔵しないことも、ちょっと裏目に出ている。ビデオカードを別途用意するようなハイエンドの領域では、Core-i7の性能に負けている。Core-i5ぐらいになってくると、内蔵GPUを使う人もそこそこいるのだが、AMD FXはGPUを内蔵しない。ちょっと使いどころが難しい。

ネット用などの軽い作業ならPentium GやCeleron Gで十分だ。オフィス用などでもう少しパワーが欲しいなら、1ランク上のCore-i3を選べばよい。

AMD AシリーズのAPUは、CPUパワー的にはCore-i3〜Celeron Gと重なる。AシリーズのハイエンドはCore-i3のハイエンドよりやや低めで、ローエンドはCeleron Gのローエンドよりやや低め、という感じに、全体的に少し下方にずれた領域をカバーしている。単純なCPUパワーと価格を考えると、「別にAPUじゃなくてPentium GやCeleron Gでもいいじゃないの」ということになってしまう。

一方、内蔵GPUについては、今のところAPUの方が一日の長がある。Radeonは3Dだけでなく動画再生支援の機能も充実している。ネット用だけど高解像度の動画を全画面で視聴することもあるとか、軽い3Dゲームもするとか、そういう人にはAシリーズがオススメ。

最近ではウィンドウの表示ですらGPUを活用しているので、大きなディスプレイ上でExcelをグリグリ操作するような状況では、意外とAPUでも快適だったりする。

ただ、Intelの内蔵GPUも進化している上に、Skylake世代では、デスクトップ向けのCeleron GやPentium Gの内蔵GPUでも、今までサポートされてなかった動画再生の支援機能がサポートされるようになった。Aシリーズのミドル〜ローエンドの製品の利点が揺らいできた感がある。個人的にはPentium G4500の内蔵GPUを含む総合性能が気になるところだ。

これらの機能は、ハードウェアそのものだけでなく、ドライバの品質も性能に影響を与える。WindowsではなくLinuxを入れるなら、出たばかりのSkylake世代のPentium Gよりも、出たから時間を経ているAMD Aシリーズの方が、ドライバの完成度の面で安心できるかもしれない。

Pentium NやCeleron Nの中身はAtomなので、CPUパワーは低い。全体的な性能もさることながら、シングルスレッド(つまり1コア)の性能も低い。そのためパンチがない。瞬間的なパワーをひねり出せないCPUなので、クライアント用途には向いていない。操作の節々にて、微妙な引っ掛かりを感じてしまう。

性能が低いといっても、Pentium N3700(4コア)のシングルスレッドの性能はSandy Bridge世代のモバイル向けCeleron 847(2コア)に肉薄しているし、コア数が倍なので全体的な性能は上回っている部分がある。Atomだって地味に進化しているのだ。

TDPが低めなので、24時間稼動させてバックグラウンドでだらだら処理をさせるサーバ用途にすると、電気代的にお財布に優しいだろう。

同じくサーバ用途でも、もう少しパワーが欲しいならAthlonSempronを検討してもよいだろう。TDPは少し高くなってしまうが、シングルスレッド性能はPentium NやCeleron Nよりも高い。

Athlon 5350(Athlonの現時点での最上位モデル)あたりが、クライアント用途に使えるギリギリの性能であるようだ。「問題ない」という人と「ちょっと辛い」という人に分かれてくるのがこのあたりで、つまり、例えば今まで古いPCを使い続けてきた人には十分な性能だと感じられる程度のパワーがある。しかし個人的には、クライアント用途ならもうちょっと上のCPUを選択するべきだと思う。

安さを求めるなら、x86を捨ててARMのシングルボードコンピュータにしてみる、という方向もある。GUIのデスクトップ環境や、百歩譲ってCLIのシェルを求めるなら、OSはLinuxになる*1microSDにOSを構築して使用するボードの場合、microSDの耐久性が少々気になる。そういった点を乗り越えられるなら、ボード次第だが、数年前のスマホや現行のローエンド〜ミドルエンドのスマホぐらいの性能のものが、高くても1万円ちょっとで手に入る。これらのボードは、自作PCでいうなら「CPUとメモリがオンボードマザーボード」だ。eMMC内蔵なら、容量は大分少ないものの「HDD/SSDまでオンボード」とでもいうか。

電源回りの安定性とか、色々と削られていても気にしないなら、Raspberry Pi 2 Model Bが安価でかつネット用ぐらいの軽い作業に使えるレベル。Raspberry Pi Model B+になると、モッサリ感を受け入れつつリモート接続してCLI生活するのが無難だろう。元々が教育用のコンピュータなので、デスクトップ環境が簡単に整えられるようになっている。日本語の情報も豊富だ。ケースなどの小物類も揃っている。他のボードよりは初級者に薦めやすい。

最近国内販売が始まったDragonBoard 410Cは、1万円ちょっとと高めだが、性能はRaspberry Pi 2よりも上だ。スマホ向けのSoCを使っているため、有線LANは無いが、無線LANBluetoothGPSが使える。8GBのeMMCを内蔵しているので、OSをeMMCに書き込んで使用すれば、microSDで運用するよりは耐久性が高いはずだ。

個人的にはMinnowBoard MAX*2も気になるのだが、未だに入手方法がよく分からない。Edisonのように普通に国内で販売してくれないものか。

色々と書いてきたが、締めの一言をば。Celeron 847の代替にAMD A6-7400Kを買ったぞ! AMDのCPUを使うのは、K6-IIIのODPを使った頃以来となる。自作PCでは初めてだ。

*1:Windows 10 IoTはGUIを使用できるが、デスクトップ環境やシェルは存在しない。PowerShellでリモート接続して操作することは可能。

*2:ARMじゃなくてIntel Atomが載っている!