なぜかセットで名前が挙がることの多い、Panasonicのカナル型イヤホンRP-HJE150とRP-HJE122A。両者を実際に聞き比べたレビューがなさそうなので、試しにやってみた。
RP-HJE150といえば、1000円以内で買えて、価格の割には音が良いと評判なイヤホンだ。
パナソニック カナル型イヤホン ブラック RP-HJE150-K
- 出版社/メーカー: パナソニック
- 発売日: 2008/10/15
- メディア: エレクトロニクス
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似たような製品に、同じくPanasonicのRP-HJE122AというAmazon限定モデルがある。
【Amazon.co.jp限定】 パナソニック カナル型イヤホン フラストレーションフリーパッケージ(FFP)モデル ホワイト RP-HJE122A-W
- 出版社/メーカー: パナソニック
- メディア: エレクトロニクス
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この2つ、製品名(型番)も仕様も異なるのにAmazonのページが共通で、「通常モデル」を選択すればRP-HJE150が、「Amazon.co.jp限定」を選択すればRP-HJE122Aが買えるという、少々鬼畜な状況になっている。今は分からないが、少なくとも過去には間違えて購入した人がいたようだ。RP-HJE150をリピート購入しようとしてRP-HJE122Aを購入してしまうも、製品が違うことに気づかずに「音が違うぞ! 劣化した!」と怒りの声を上げたらしき人の痕跡もちらりと見うけられる。
ただ、この2つを実際に聞き比べて、具体的に音の何がどう違うのか書いている記事が見当たらない。探し方が悪いだけかもしれないが、「違う」とだけ書かれても、その「違い」がなんなのか分からなくて困るのだ。
仕様の違い
聞き比べる前に、まずは両者の仕様から。
製品名 | RP-HJE150 | RP-HJE122A |
---|---|---|
形式 | 密閉型ダイナミック・ステレオインサイドホン | 密閉型ダイナミック・ステレオインサイドホン |
ドライバーユニット直径 | 10.7 mm | 9 mm |
インピーダンス | 16 Ω | 16 Ω |
音圧感度 | 100 dB/mW | 96 dB/mW |
最大入力 | 200 mW (IEC) | 200 mW (IEC) |
再生周波数帯域 | 6 Hz - 23 kHz | 20 Hz - 20 kHz |
コード長さ* | 約 1.2 m | 約 1.1 m |
プラグの種類 | ステレオミニプラグ(直径 3.5 mm) | ステレオミニプラグ(直径 3.5 mm) |
プラグの型 | ストレート型 | L型 |
プラグの金メッキ | あり | なし |
質量(コードを含む) | 約 11 g | 約 11 g |
質量(コードを除く) | 約 3 g | 約 3 g |
付属品 | イヤーピース(XS、S 各2個) | イヤーピース(XS、M 各2個) |
標準のイヤーピース | M | S |
価格が価格だけに、両者ともBAではなくダイナミック型だ。というか、この価格でBAだったら大騒ぎだろう。
ドライバーユニットの直径は、RP-HJE150の方が大きい。仕様からは、RP-HJE150の方が低音が出るのではないかと推測できる。
音圧感度も、RP-HJE150の方が大きい。プレーヤーの音量を変えずにイヤホンを差し替えた場合、おそらくRP-HJE150の方が音が大きいはずだ。
再生周波数帯域はRP-HJE150の方が広いが、これが音に影響してくるか否かは不明。一般的にいわれている可聴域は20Hz〜20kHzだが、この範囲はRP-HJE122Aもカバーしている。可聴域の範囲外の音(超音波)のヒトへの影響は、まだ研究中の分野だ。
プラグはどちらもステレオミニプラグだが、RP-HJE150はストレート型で金メッキあり、RP-HJE122AはL型で金メッキなし、という違いがある。金メッキの有無は、音質の差云々よりも、経年劣化による酸化(それによるノイズの発生*1)への影響が大きい気がする。
地味に違いがあるのが、購入時点で取り付けられているイヤーピースの大きさ。RP-HJE150のMサイズにたいして、RP-HJE122AではSサイズだ。世の中にはイヤーピースに無頓着な人も多く、そういう人たちは購入時のイヤーピースのままイヤホンを使おうとする。イヤーピースは意外と音に影響を与える部品だ。「RP-HJE150とRP-HJE122Aとで音が違う」という言説の中には、イヤーピースの大きさの違いに起因するものも含まれているのではないだろうか?
聞き比べ:評価環境
RP-HJE150とRP-HJE122Aとの聞き比べは、次の条件で実施した。
- 音源としてiPod classic(第6世代)を使用。
- イコライザーはOFF(フラット状態)
- RP-HJE150、RP-HJE122A両者とも、イヤーピースをMサイズに統一。
- 比較対象として、以下のイヤホンを使用。
- XYY-16
- 100均で売っている100円イヤホンの横綱。100円ショップのSeria(セリア)で売っている。
- オーディオテクニカ ATH-CK330M
- この記事を書いている時点で、実売価格2,000円前後のカナル型イヤホン。これまたネット上での「値段のわりには良い音をしている」と噂になっている……気がしないでもない。
- XYY-16
聞き比べ:音の共通点
RP-HJE150とRP-HJE122A、どちらも価格の割には良い音を出している。とはいえ、価格が価格だけに、過度の期待は厳禁だ。
音の傾向は、両者とも同じ。フラットというか、低音域から高音域まで比較的バランスのとれた出方をしている。あと、音がセンター寄りに鳴っている。
音質は、XYY-16よりも遥かに良い。XYY-16よりも音はこもっていないし、細かい音も出ている。だがATH-CK330Mには遥かに及ばない。ATH-CK330Mの方が解像度が高く、より自然な音が出ている。
高音域の解像度があまり良くなくて、例えばハイハットやシンバルの音が潰れている。それっぽい音はするが、ハイハット本来の音ではない。
聞き比べ:音の違い
音の違いよりも前に、まず音の大きさが違う。音圧感度の差による影響が、素人でも分かるぐらいに表れている。音源のボリュームを固定した状態でイヤホンを差し替えると、RP-HJE150にて適切な音量だったならRP-HJE122Aでは小さく聞こえるし、RP-HJE122Aて適切な音量だったならRP-HJE150では音が少々大きすぎる感じになる。
音質(解像度やこもり)はRP-HJE150の方が良い。聞き比べると、RP-HJE122Aの方がこもっているような音がするし、高音寄りの音が軽い(安っぽい)感じがする。劇的に違う、というわけではないのだが、実際に聞き比べると、素人でも「うーん、これはちょっと差があるのでは?」と疑問に思う程度には、音質に差がある。
低音域は、RP-HJE150の方が音が出ている。同じ曲で聞き比べると、バスドラムのアタック音はRP-HJE150の方が良く聞こえる。
個人的感想
実売価格の差がたった84円である点を考慮すると、私ならRP-HJE150を買うと思う。
どちらも価格の割には良い音を出すが、実売価格が664円と580円だという点は押さえておくべきだろう。価格差が2〜3倍以上の、2,000〜3,000円台のイヤホンの音質には及ばない。というか、及んじゃったらPanasonicが商売に困るでしょ、上位モデルが売れなくて。
*1:古い音楽プレーヤー/イヤホンで時に発生する、イヤホンジャックに指したプラグを回転させると、場所によって音がキレイに出たりノイズがのったりするアレのこと。